香蘭女子短期大学

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ファッション総合学科

「ものを作る楽しさを知ってほしい」一つのものを作り上げる経験はあらゆる環境で生かされる【Vol.1】

「つくる面白さをしるキッカケになりたい」作家アーティスト活動中に香蘭へ

若い世代に「つくることの面白さを知ってほしい!」そんな想いで教えています。私はもともと大学でアートと染織技法(染めたり織ったり)を学んだあと、もっと人と作ったものでコミュニケーションしていきたいとう思いが強くなり、ファッションを学び始めました。自分が作ったテキスタイルで服を作ったり、作品を作ってアーティスト活動を並行してやりながら「ファッション」って何だろう?と自分なりに学び手を動かす中で、自分や他者、地域など興味の範囲がどんどん広がってきました。
約200年前から織られている久留米絣という織物の産地で、「制作拠点と人が集まる場所をつくりたい!」という想いで、「テキスタイルとファッション」をキーワードに誰でも使えるものづくりスペースをつくったりなど地方創生のプロジェクトなどに関わっていました。

地域で活動する中で町の魅力や、人のおもしろさなども知っていき、地域の素材を使った表現と、それを色んな人と体感できるような場をつくるアートプロジェクトをはじめました。またそこから自分で1から場所を作ろうと、使われていなかった家を自分たちでリノベーションしてギャラリーを作ったり活動が広がっていきました。染めることの面白さなどを知ってもらうワークショップを行ったり、地域のものをテーマに染めを技法に作品を作ったりしていました。そのタイミングから非常勤で香蘭で染め物の授業を担当することになり、作家活動と並行して2年間ほど経験しました。そういった中で「若い世代に作ることの面白さを知ってほしい」という想いがあったので、2022年4月から香蘭で教えています。

たった一枚の布にも物語がある。テキスタイルの魅力

テキスタイルの魅力は、布一枚でもその背景に歴史やストーリーがある、時には表現にもなるということです。そもそもテキスタイルは広い意味では「布」です。布は人の生活に最も身近ですよね。布がないと人は服を着れないし、インテリアなどの空間もできない。日本だけでもいろんなテキスタイル産地の特性や歴史があります。私が活動している久留米絣の産地もその織られている布一枚からいろいろなことが見えてきてとてもおもしろいです。久留米絣は平織りという基本的な織り方でできているのですが、柄を出すために糸を括って染め分けることで掠れたような面白い柄が織られています。織られている現場を知ることで、それを作っている人たちの魅力なども伝わってきて布を超えて人や地域のおもしろさにも感じます。そういった意味でもたった一枚の布でもいろんなものが見えてきます。

私が担当している織物の授業でも、糸から自分で染めて実際に自分で織機を動かして布を織っていきます。一枚のテキスタイルができるまで長い道のりなんですが、自分でデザインして一から織ったものが出来上がったときの喜びや、実際に手を動かすことで出てくるアイデアなどを大切にしてほしいなと思います。自分で手を動かして体感することってこれからのファッションを考えていく上でも大事なことだなと思います。

作る経験をすると、「モノの見え方」が一気に変わります

自分で染めたり織ったりできるようになると、ものをつくることの解像度が上がって、いままで何気なく見ていた服の素材など、作られているもののおもしろさや興味が広がったりして日々がより一層おもしろくなると思います。簡単にいろんなものが手に入る世の中だからこそ、自分で作ることってすごく勉強になりますし、自分で作る楽しさや喜び、達成感を味わうのもすごく大切だと思います。

人の手が入って作られていること、生地が作られていることなどそういうものが想像できるようになったり、素敵なテキスタイルや服をみても、より一層作り手の凄さに気づくこともできます。
そこからテキスタイル産地に足を運んで、現場や職人さんの話を聞きに行くなど、自分の興味もどんどん増えていくことで、その先にやりたいことや目指したいものが自然と繋がっていくと思います。実際に私もどんどん興味が広がって今に至るので、染めることや織ることなど手を動かすことを通してものづくりの楽しさや興味のキッカケになるような窓口になれたらいいなと思っています。

ファッション総合学科 彌永(やなが)先生
福岡県筑後市出身。大学では染織工芸を専攻。大学在学中から服飾雑貨などの制作、展示や販売を行い、卒業後もアーティスト活動も続ける。福岡県八女郡広川町の地域おこし協力隊に参加し、ものづくりスペースの設立。2020年、同町にアートプロジェクト兼店舗の開業などもおこない今に至る。趣味は本を読むこと。漫画は幅広く読んでいて、最近は昔の少女漫画を掘り返すことにハマっている。

「ものを作る楽しさを知ってほしい」一つのものを作り上げる経験はあらゆる環境で生かされる【Vol.1】