香蘭女子短期大学

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食物栄養学科

スポーツの世界でも重要な栄養の世界【Vol.2】卒業生インタビュー (佐田真知子)

スポーツに携わる栄養士を目指したきっかけは

私は昔からスポーツが好きで、高校生の時は女子水泳部に所属していました。その時に、同じプールで活動していた男子水泳部の部員が、監督から部活動後にプロテインを飲むように指導を受けていて、すごく細かった男子が3年生になるころにはムキムキとした筋肉質の体型に成長していました。そんなことから食べ物と運動の深い関わりに興味を持つようになりました。
またアトピー性皮膚炎ですごく限られた食材しか食べられずにいる友人がいて、食べ物が身体に及ぼす影響を考えるようになっていきました。自身の進路を考えた時に「食と栄養」や「栄養と身体の関係」について学ぶことのできる栄養士になろうと思い、香蘭女子短期大学に進学しました。

卒業後の進路

短期大学で2年間学び、卒業後まずは直営の病院で3年間働きました。栄養士の資格は得たものの、授業で学ぶのと実際に働くのではギャップがあり、想像以上に大変でした。その中でも栄養士として働く中で「糖尿病の治療」にも興味がわき、運動が好きだった私は「栄養管理と運動療法」を学びたいと思い「健康運動指導士」という資格にチャレンジすることにしました。
この資格を取るにはまず、管理栄養士の資格を取得しなければ受験資格が得られません。
そこで、管理栄養士の資格取得を目標に、仕事と勉強の両立に奮闘しました。卒業後も香蘭女子短期大学の対策講座に通わせていただいたことを今でも思い出します。
3度目のチャレンジで管理栄養士の資格を取得。しかし当時の健康運動指導士は約1週間の講習を1年間に4回ほど受講し、試験に合格しなければなりませんでした。病院で勤務しながら長期の休暇を何度も取ることが難しかったため、退職してアルバイトをしながら挑むことにしました。経済的には大変でしたが、運動と栄養の関わりを深く学び、無事に健康運動指導士の資格を取得することができました。
そうは言っても運動と栄養管理を行う仕事がすぐに見つかるわけではなく、まずある給食委託会社に管理栄養士として勤務しました。そこでは本部で約20件のクリニックの献立作成を行い、遠隔で発注し、事業所の巡回を行いながら現場スタッフに調理法などの指示を行う業務に携わりました。色々な立場のスタッフと仕事を円滑に進める重要さや、大変さをしっかりと学ばせていただきました。
そんな中でも、「運動と栄養について学びたい」という気持ちが薄れることはありませんでした。また世間でも「スポーツ栄養」という分野が少しずつ確立されてきた頃。仕事をしながらでもスポーツ栄養と名の付く講習会があれば、東京や大阪にも足を運ぶようになりました。そしてスポーツ栄養の仕事に興味が深まり、事あるごとに「スポーツに関わる栄養士の求人があれば紹介してほしい」と周りの方々に相談するようになっていました。

チャンスは突然やってくる!

そんなある日、職場の先輩栄養士が「某プロ野球チームの2軍寮の献立作成業務に興味がある人を捜しているみたいだけど受けてみたら?」と情報を下さいました。とにかくスポーツ選手の栄養管理に携わりたい一心ですぐに応募。そして採用されたのが、現在も勤務している「株式会社LEOC(以下㈱LEOCと略す)」です。こうして念願の業務に就くことができたのも、「運動と栄養に関わりたい」という思いを捨てることなく、学びに費やしてきた日々の努力があったからこそだと思っています。
当時はチーム所属の管理栄養士がいましたので、その方を中心にどのような食事提供を行うことが選手の身体づくりや体調管理に繋がるか、ミーティングを行いながらメニュー作成を行いました。選手との関わりは少なかったですが、実際に自分が立てたメニューを選手が食べてくれること、それで身体が大きくなる姿を見てとてもやりがいを感じました。

世界水泳大会に管理栄養士として同行!

1,2年ほど経ったある日、㈱LEOC本社からとある連絡がありました。日本代表競泳選手の栄養サポート業務を受託したため、担当の管理栄養士1名を公募するというのです。学生時代に水泳部だったこともあり、これは応募するしかない!と思い手を挙げたところ、こちらも運よく採用されました。競技経験者ということもあり、大会の流れを理解し、選手の気持ちに寄り添えるのではないかという点が決め手になったのかもしれません。

業務内容は2005年~2008年の約4年間、日本代表選手の活動(国内合宿、海外合宿遠征、世界水泳大会)をサポートするというもの。日本代表選手の海外遠征に同行し、ホテルで選手に提供される食事の確認や、栄養指導に携わりました。
練習中や練習後の疲労回復を早めるため、アミノ酸サプリメントをベストタイミングで提供するという重要な任務があり、アミノ酸の摂取タイミングや水分補給なども勉強して知識を深めました。
当時の競泳は大きな試合の1〜2ヶ月ほど前から、高地合宿で調整をしながら大会に臨むという流れがあり、世界大会の場合は高地合宿も海外で行っていました。ハードな練習や海外の環境で選手の食欲がなくなる場合も多いので、補食として練習後などにおにぎりを提供することもありました。
また、夕食には選手からの「食べたいものリクエスト」に応えるため、車を借りて食材を購入しに行き、ホテルの厨房ではなく自身の部屋にカセットコンロや炊飯器を持ち込んで調理を行い提供しました。カレーやすき焼き、焼き肉、手巻き寿司などが人気でした。
競泳選手は活動量が多いので、食事制限をするというよりは、体重が落ちないようにすることが重要でした。食事の時間だけが楽しみの選手がほとんどで、特に海外では日本食を恋しがる選手も多く、ご飯や味噌汁をいつでも食べられるように用意していたのを覚えています。また少しでもストレスを発散してもらうために、和風スイーツを準備して食事の時間を楽しんでもらえるように工夫をしていました!

高地ではご飯を炊くときに沸点が上がらず、上手く炊けずにとても苦労しました。これらのことを一人で行うのはとても大変でしたが、目標としていたスポーツ栄養に携わることができて充実した期間でした。この期間の業務は㈱ LEOCのサポートがあってのことです。海外への食材準備などはもちろんのこと、遠征中も連絡を取りながらとても綿密にサポートしてもらいました。

再度、某プロ野球チーム2軍選手寮での栄養管理に携わる!

4年間に及ぶ日本代表競泳選手のサポート業務を終えてからは、新規受託の際のオープニング業務に携わるなど㈱LEOCのさまざまな受託先に配属していただき、献立作成やイベントの提案・実施など色々な業務に携わることができました。常に新しいことにチャレンジできる環境であったことに、とても感謝しています。
そんな中で再び某プロ野球チーム2軍寮の受託が決まり、社内にて配属する管理栄養士の募集が行われました。すごく悩みましたが応募することにし、食事提供の立ち上げに関わりました。栄養指導を行う役割には公認スポーツ栄養士の資格を持った㈱LEOCの管理栄養士が1名配属され、私は主に献立作成、食材料発注、配膳作業などを行いました。
チームの意向をしっかりと受け止め、若い選手の身体作り、家庭的な落ち着ける空間づくりを意識し、公認スポーツ栄養士と現場スタッフと試行錯誤しながら、約5年間食事提供を行いました。

給食委託会社から公認スポーツ栄養士を目指す道

私が競泳日本代表の栄養管理をしていた当時は、公認スポーツ栄養士資格ができたばかりでした。現在は社内でもスポーツ栄養の勉強会が開催されていますが、その頃はすべて自分で講習会を探し、休日を利用して勉強していくしかありませんでした。そのため業務との両立が難しく、当時は公認スポーツ栄養士の資格は取得できませんでした。それでも現在入社22年目となり、様々な経験をさせていただいたことは、とても大きな財産だと感じています。現在でも社内の勉強会に参加させていただいていますが、全国各地のスポーツ栄養に興味のある方々が集まりますので、たくさんの刺激をもらうことができ、とても充実した時間を過ごせています。
委託会社では色々な業態の栄養士として働くことが可能ですので、病院や老人保健施設などで厨房業務や基本的な献立展開を学んでから、専門的にスポーツ選手の栄養サポートへ挑戦してもよいのではないでしょうか。スポーツ栄養士になりたい人は、スポーツ関連施設の受託先がある委託会社に入社するというのも近道かもしれませんね。

やりがいを感じるとき

スポーツ栄養は選手の日々の食事に携わり、体づくりの基本を担う仕事です。選手が目標とする体格や体重に近づくことで成績が良くなったなど、結果を残せた時にはとてもやりがいを感じます。
一方で、食事を摂ることがストレスに感じるようなことがあると本末転倒になってしまいます。楽しそうに食事をとっている姿を見られたり、料理を食べた選手から「おいしかった!」と言われたりした時はとても嬉しく、さらにおいしい料理で選手の力になりたいと強く思います。

後輩へのメッセージ

スポーツ栄養の仕事は、キラキラして楽しそうに見えているかもしれません。興味を持っている人や関わりたいと思っている人はとても多いと思いますが、実際にそのような仕事に関わるようになるのは狭き門で、それだけにたどり着くにも時間がかかることもあります。なってからの仕事環境も厳しいものです。
ただし、それだけにやりがいもひとしおです。本気で目指すのであれば、やりたい気持ちを継続することが大切。また、サポート業務とは一人では行えず、必ずチームでの活動となりますので、「人との関わり」を大切にしてほしいと思います。人との関わりを大切に自身の夢や目標、スポーツ栄養に携わりたいことを伝えておくことで、チャンスが巡ってくるかもしれません。
活躍の場は様々あるかと思います。夢に向かって、日々頑張ってほしいと思っています。

経歴

卒業後・・・・・直営の病院に就職
3年~5年・・・・管理栄養士免許、運動栄養指導士免許取得
6年目・・・・・・株式会社LEOC入社(現職)、某プロ野球チーム2軍寮のメニュー作成
12年目・・・・・・世界水泳大会に管理栄養士として同行
14年目・・・・・・世界水泳大会に管理栄養士として同行
25~29年目・・・・某プロ野球チーム2軍寮の献立作成・運営管理に従事

まとめ

現在、スポーツ栄養士の仕事は、まだ認知度が低いのですが、今後は病院や福祉施設などの栄養士・管理栄養士と同じように、スポーツ選手やスポーツチーム、ジュニアアスリートのパフォーマンス向上など、栄養面を支える職業の一つになると考えられます。また、病院や福祉施設、一般の健康増進施設などでもスポーツ栄養の知識を生かした栄養指導が行われつつありますので、今後需要が高まるものと考えます。
スポーツ栄養士の仕事は、大学・短期大学卒業後すぐに就職するのは難しいので、将来を見据えた就職として、地道な努力をしてていくことで、道が開けるものと思われます。

本学の食物栄養学科カリキュラムは、「スポーツ・健康美容」、「調理・食育」、「フードマネジメント」の3つのユニット制となっています。その中の「スポーツ・健康美容」ユニットでは、スポーツ栄養関係の民間資格であるアスリートフードマイスターの取得ができますので、スポーツ栄養士になりたい人は、少しだけ目標に近づくことができるかも知れません。
スポーツ栄養への進路を考えている高校生の皆さん、香蘭女子短期大学の食物栄養学科で学ぶことを検討してみてはいかがでしょうか。

宮﨑 貴美子
香蘭女子短期大学 教授

香蘭女子短期大学家政科栄養士コース卒業
長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科博士後期課程修了
管理栄養士
博士(学術)

スポーツの世界でも重要な栄養の世界【Vol.2】卒業生インタビュー (佐田真知子)